なぜハンドドリップコーヒーは苦い・酸っぱい・薄くなるのか?(本当に効く5つの改善ポイント)
レシピは守った。
豆もきちんと計量した。
注ぎ方も丁寧にやった。
それなのに……
ある日は苦く、次の日は酸っぱく、時には薄くて水っぽい。
もし思い当たるなら、ひとまず深呼吸してください。
それ、とてもよくあることです。
ハンドドリップは「正確さ」が魅力です。
そして同時に、その正確さゆえに難しくもあります。
挽き目、水温、注ぐスピードといったほんの小さな違いで、味は大きく変わってしまいます。
でも安心してください。
新しいドリッパーも、バリスタ資格も必要ありません。
必要なのは「今、何が起きているのか」を見極める視点と、本当に効果のあるいくつかの調整ポイントだけです。
このガイドでは、以下をお伝えします。
・過抽出か、未抽出か、ムラのある抽出かを見分ける方法
・味を改善するための5つのシンプルな調整ポイント
・勘に頼らず調整できる、安定した基準レシピの作り方
毎回、甘くてバランスの取れた一杯を目指しましょう。
まず知っておきたい:「苦い」「酸っぱい」「薄い」の正体
調整に入る前に、味の違和感を抽出の言葉に置き換えることが大切です。
苦い/渋い/口の中が乾く
これは多くの場合、過抽出です。
コーヒーから必要以上に成分を引き出してしまい、苦味や渋みが前に出ています。
特に「口の中がキュッと乾く感じ」は重要なサインです。
濃い紅茶を長く浸しすぎた時のような感覚があれば、過抽出、または抽出ムラの可能性が高いです。
酸っぱい/シャープ/薄く感じる
これは未抽出であることがほとんどです。
甘さやコクが十分に引き出されず、酸味だけが前に出てしまっています。
レモンのような明るさではなく、
ツンと尖った、物足りない酸味なら、豆の問題ではなく抽出の問題です。
薄い/水っぽい
「薄い」には2つの可能性があります。
・未抽出で、なおかつ希釈されすぎている
・単純に粉量が少ない(比率が低い)
必ずしも酸っぱいとは限らず、
ただ味がぼやけていることもあります。
実は多い「酸っぱくて苦い」
酸味も苦味も感じる場合、原因は抽出ムラであることが多いです。
一部は過抽出、別の部分は未抽出。
ハンドドリップではとてもよく起こります。
そして、これは直せます。
20秒でできる簡単セルフ診断
一口飲んだあと、自分にこう聞いてみてください。
・口の中が乾く?
→ 過抽出、または攪拌しすぎの可能性
・尖っていて中身がない?
→ 未抽出の可能性
・ただの薄いお湯みたい?
→ 比率が低い、抽出が速すぎる、または両方
・酸っぱくて苦い、どちらもある?
→ 抽出ムラの可能性
では、ここから一つずつ直していきましょう。
Fix #1:挽き目を調整する(最も効果が大きい)
ハンドドリップで一番効く調整ポイントは、挽き目です。
ドリッパーでもケトルでもありません。挽き目です。
挽き目は、水がどれだけ速く味を引き出すかを決めます。
・細かすぎる → 抽出が強すぎて苦くなりやすい
・粗すぎる → 水がすぐ抜けて酸っぱく・薄くなりやすい
苦い・渋い場合
→ 一段階だけ粗くしてください。
大きく動かす必要はありません。
「一段階」で十分です。
酸っぱい・薄い場合
→ 一段階だけ細かく。
酸っぱくて苦い場合
これは微粉が多い、または流れが偏っている可能性があります。
・少し粗くする
・攪拌を減らす
・グラインダーが微粉を多く出していないか確認する
挽き目を少し変えるだけで、
「これだ」という甘さに一気に近づくことがよくあります。
Fix #2:粉とお湯の比率を整える(多くの人は薄すぎる)
家で淹れるコーヒーが薄い理由の多くは、比率が低すぎることです。
ハンドドリップの基本比率は:
1:15〜1:17(コーヒー:お湯)
迷ったら 1:16 から始めてください。
例:
・20g → 320g
・15g → 240g
・18g → 288g
薄いと感じたら、まずは
やり方を変えずに、粉を少し増やすかお湯を少し減らす。
それだけで一気に輪郭が出ることも多いです。
Fix #3:湯温を味方につける
湯温は抽出の「音量調整」のようなものです。
高いほどよく抽出され、低いほど穏やかになります。
目安:
・浅煎り:92〜96℃
・中煎り:90〜94℃
・深煎り:88〜92℃
苦い・荒い場合
→ 2〜4℃下げる
酸っぱい・平坦な場合
→ 2〜4℃上げる
温度計がなくても大丈夫。
沸騰後30〜60秒待つだけでも、角が取れることがあります。
Fix #4:攪拌しすぎない(やりすぎ注意)
意外と多いのがこれです。
攪拌は必要ですが、やりすぎると逆効果。
・苦味が出やすくなる
・流れが不均一になる
・微粉がフィルターを詰まらせる
対策:
・優しく、一定のスピードで注ぐ
・激しい攪拌はしない
・スワールは一度、軽くで十分
良いハンドドリップは、見た目が地味です。
それは褒め言葉。
Fix #5:抽出時間と流れを見る
時間は目標ではなく「ヒント」です。
V60やカリタなら、
2分30秒〜3分30秒が一般的。
・速すぎる → 未抽出
・遅すぎる → 過抽出、または詰まり
微調整は、挽き目と攪拌で行いましょう。
なぜ「同じことをしているのに」味が変わるのか
原因はたいてい、次のどれかです。
・グラインダーの粒度が安定していない
・水質が変わった(地域・季節)
・豆の鮮度が変わった
・注ぎ方が少し変わっている
ハンドドリップは繊細です。
それは失敗ではなく、特性です。
最後に
ハンドドリップは「完璧」を目指すものではありません。
安心して繰り返せる一杯を作ることがゴールです。
基準ができれば、
「この豆は温度高めがいい」
「これは攪拌しないほうが甘い」
と、感覚が育っていきます。
そうなったとき、
ハンドドリップはようやく“リラックスできる時間”になります。
それが、本来の姿です。
