コーヒーのフレーバーノートは本当に存在する?テイスティングノートの読み方と、自分に合う豆の選び方
スペシャルティコーヒーの袋を手に取り、「オレンジブロッサム、ブルーベリー、キャラメル」といった表記を見たとき、
「え、コーヒーなのに本当にそんな味がするの?」
あるいは、もっと正直に「何か加えているんじゃないの?」と思ったことはありませんか。
その感覚、とても自然です。特に日本ではスペシャルティコーヒーがここ数年で一気に広まり、表現が詩的になりがちなこともあって、テイスティングノートがワクワクのきっかけになる一方、少し分かりにくく感じることもあります。
そこで今回は、実際に役立つ形でその疑問を整理してみましょう。
まず大切なことからお伝えします。
ほとんどのスペシャルティコーヒーには、香料やフレーバーは加えられていません。
フローラル、フルーツ、チョコレート、バニラといった表現は、コーヒーが本来持っている香りや味わいを言葉にしたものです。産地、精製方法、焙煎、そして淹れ方によって自然に生まれる個性を表しています。
テイスティングノートは「保証」ではなく、「方向性を示す地図」のようなもの。読み方が分かれば、とても頼もしいガイドになります。
この記事では、次のことが分かります。
・テイスティングノートが本当は何を意味しているのか
・「フレーバーコーヒー」との違い
・お茶、果物、デザート、エスプレッソなど、好みから豆を選ぶ方法
・ノートに書かれた味を感じやすくする淹れ方のコツ
コーヒーのラベルを、もう一度「やさしいもの」に戻していきましょう。
コーヒーの「テイスティングノート」とは何か
テイスティングノートとは、簡単に言えば
「香り・味・後味で、こんな印象を感じるかもしれません」という表現です。
実際の原材料を示しているわけではなく、たとえ話だと考えると分かりやすいでしょう。
「ジャスミン」と書かれていても、ジャスミンが入っているわけではありません。軽やかで花のような香りを連想させる、という意味です。
「ブルーベリー」なら、甘くジューシーで果実感のある印象を指すことが多く、特定の精製方法と結びついています。
ワインを「チェリーのよう」と表現したり、チョコレートを「ナッツ感がある」と言ったりするのと同じ感覚です。
スペシャルティコーヒーでは、こうした表現は訓練を積んだカッパーやテイスターが、できるだけ正確に伝えようとして選んでいます。
フレーバーは加えられているの?
結論から言うと、
スペシャルティコーヒーでは、基本的に加えられていません。
ただし、混同されやすいものが3つあります。
① テイスティングノートが書かれたスペシャルティコーヒー
産地・精製・焙煎による自然な味わいです。
② フレーバーコーヒー
焙煎後にバニラやヘーゼルナッツなどの香料を加えたもの。別ジャンルとして楽しまれています。
③ 共発酵・インフューズドコーヒー
発酵工程で果物や花を使い香りに影響を与える手法。革新的ですが、きちんと明記されるべきものです。
迷ったときの判断基準はシンプルです。
透明性。信頼できるロースターは、自然な風味なのか、加工由来なのかをきちんと説明しています。
なぜコーヒーがフルーティーやフローラルに感じるのか
コーヒーは、果実です。
この一言が、ほとんどの疑問を解決してくれます。
コーヒー豆はコーヒーチェリーの中の種。その果実の成分が、精製・焙煎・抽出を経て香りとして現れます。
味を決める大きな要素は、主に4つあります。
1)産地と品種
エチオピアのウォッシュドは花や紅茶のよう、コロンビアは甘さとバランス、ベトナムのスペシャルティでも明るい果実感が出ることがあります。
2)精製方法
ウォッシュドはクリーンで明確、ナチュラルは果実感が豊か、ハニーはその中間です。
3)発酵スタイル
嫌気性発酵などは、トロピカルやジューシーな印象を強めます。派手だけでなく、上品にも仕上がります。アナエロビックコーヒーについてさらに詳しく知りたい場合は、ここで詳細な説明をお読みください。
4)焙煎度
浅煎りは花や柑橘、中煎りはキャラメルや蜂蜜、深煎りはチョコレートやビター感が出やすくなります。
テイスティングノートの読み方(考えすぎないコツ)
ノートは「約束」ではなく、「傾向」です。
多くの場合、
香り → 味 → 余韻
という流れを表しています。
また、「シトラス」「ストーンフルーツ」「トロピカルフルーツ」はカテゴリ表現。完全に一致しなくても問題ありません。
最後に書かれたノートは、後味のヒントになることが多く、満足感を左右します。
フレーバー翻訳ガイド(実用編)
・フローラル:軽やかで上品。紅茶好きにおすすめ
・シトラス:爽やかで明るい酸。すっきり派向け
・ベリー:ジューシーで甘い果実感
・トロピカル:個性的で冒険的 ( トロピカルフルーツ系のコーヒーがお好きなら、ベトナムのファーム・トゥ・カップのパートナー 「Kho Zanya」 がおすすめです。パッションフルーツやピーチを思わせる、クリーンで明るい風味が広がります。)
・キャラメル/蜂蜜:やさしい甘さ
・チョコレート/ナッツ:エスプレッソ好きの定番
袋の味と違うと感じる理由
多くの場合、原因は抽出です。
・湯温が高すぎる
・挽き目が細かすぎる
・攪拌しすぎ
・豆が古い
・抽出方法が合っていない
まずは「少し粗く挽く」「優しく注ぐ」だけでも、驚くほど印象が変わることがあります。
30秒でできる豆選び
・紅茶が好き → フローラル/シトラス. たとえば、当社の新製品「エチオピア グジ シャキソ G1 ナチュラル」がお気に召すかもしれません。
・果物が好き → ベリー/トロピカル
・デザート系が好き → キャラメル/蜂蜜
・カフェラテ派 → チョコレート/ナッツ
最後に:テイスティングノートはテストではない
正解を当てる必要はありません。
大切なのは、自分が「おいしい」と感じる体験です。
テイスティングノートは、生産者、ロースター、そしてあなたのカップをつなぐ橋。
その橋がつながったとき、コーヒー選びはもっと楽しくなります。
